建設業許可の専任技術者(専技)とは?業種別の要件と必要書類を福山の行政書士が解説


この記事でわかること

  • 専任技術者(専技)とは何か、なぜ必要なのか
  • 専技になるための3つの証明方法(国家資格・学歴+実務経験・実務経験のみ)
  • 業種ごとに認められる主な国家資格の一覧
  • 「常勤」要件と、経管との兼任ができるケース・できないケース
  • 申請時に必要な疎明書類の具体的な内容

目次

はじめに|専任技術者は「許可の壁」として最もよく問題になる要件

建設業許可の新規申請では、7つの要件をすべて満たす必要があります。 (詳しくは建設業許可新規申請の7つの要件とは?をご覧ください)

そのなかでも、経営業務の管理責任者(経管)と並んで「専任技術者(専技)」は、要件を満たせないケースが最も多い要件です。

「20年以上現場でやってきたのに証明できる書類がない」「資格はあるが常勤の扱いで困っている」――そういった相談が後を絶ちません。

この記事では、専任技術者の要件を業種別・証明方法別に整理し、実務上のポイントと必要書類まで詳しく解説します。


専任技術者(専技)とは?

根拠条文:建設業法第7条第2号(一般建設業)、第15条第2号(特定建設業)

「その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること」

専任技術者とは、建設工事の施工に関する技術的な知識・経験を持ち、営業所に常勤して以下の2つの役割を担う人のことです。

適正な請負契約が締結されるよう、技術的観点から契約内容の確認を行う請負契約の適正な履行が確保されるよう、現場の監理技術者等のバックアップ・サポートを行う

(出典:国土交通省「適正な施工確保のための技術者制度検討会」資料、令和4年3月)

専技は「現場で工事を直接管理する人」ではなく、営業所に常勤して契約の技術的な番人としての役割を果たす人です。現場での施工管理は、別途配置が求められる「主任技術者」や「監理技術者」が担います。

建設業法は、許可を受けるすべての業者に対して、営業所ごとに専任技術者を置くことを義務付けています。

専技と経管の違い

経営業務の管理責任者(経管)専任技術者(専技)
役割会社の経営面を管理する工事の技術面を管理する
根拠建設業法第7条第1号建設業法第7条第2号
必要人数1名(全社で)営業所ごとに1名以上
常勤要件ありあり
兼任条件つきで専技と兼任可条件つきで経管と兼任可

専技になるための3つの方法(一般建設業の場合)

一般建設業の専任技術者になるには、以下のいずれか一つを満たす必要があります。


方法① 国家資格による証明

対象の業種に応じた国家資格を保有していることで専技要件を満たす方法です。

多くの場合、資格があれば実務経験の年数を問わない最もシンプルな証明方法ですが、資格の種類によっては、資格取得後に一定の実務経験が追加で必要なものがあります。

⚠️ ワンポイントアドバイス

実務経験が追加で必要な主な資格(広島県建設業許可申請の手引き 令和7年2月版 P.103〜106より)

資格追加で必要な実務経験対象業種
第二種電気工事士免状交付後3年電気工事業
電気主任技術者(第1〜3種)免状交付後5年電気工事業
電気通信主任技術者資格者証交付後5年電気通信工事業
工事担任者(令和3年4月1日以降合格者)合格後3年電気通信工事業
給水装置工事主任技術者免状交付後1年管工事業

「資格を持っているから大丈夫」と思っていても、追加の実務経験期間を満たしていない場合は専技として認められません。資格取得年と実務経験年数を必ず確認しましょう。

業種別の主な対応資格は、後述の「業種別・国家資格対応表」でご確認ください。


方法② 学歴+実務経験による証明

指定学科を卒業した後、一定期間の実務経験を積むことで専技になる方法です。

最終学歴指定学科卒業後の実務経験年数
大学・高専卒業3年以上
高校・中学卒業5年以上

指定学科とは、業種に関連する学科のことです。たとえば土木工事業であれば「土木工学科」「都市工学科」など、建築工事業であれば「建築学科」「住居学科」などが該当します。

学歴区分と実務経験年数の根拠、および業種別の指定学科一覧については、**広島県建設業許可申請の手引き(令和7年2月版)P.15(年数要件)・P.77(業種別指定学科一覧表)**をご参照ください。

⚠️ ワンポイントアドバイス

「指定学科かどうか」の判断は、卒業した学校・学科名だけでは判断できないことがあります。学科の名称が変わっていたり、複合的な名称だったりする場合もあるため、卒業証明書・成績証明書を取得したうえで確認するのが安全です。

また、実務経験の期間は在籍していた期間ではなく、実際にその業種の建設工事の技術的な業務に携わっていた期間で計算します。事務職や現場監督補助にとどまるものは認められません。


方法③ 実務経験のみによる証明(10年ルール)

学歴に関係なく、対象業種で10年以上の実務経験があれば専技になることができます。

建設の現場で長くキャリアを積んできた方にとって、資格がなくても認められる重要なルートです。

⚠️ ワンポイントアドバイス

「10年働いた」という事実だけでは申請できません。行政はその経験を書類で確認するため、以下のような疎明資料が必要になります。

  • 元請業者の工事請負契約書・注文書・請書(工事内容・期間がわかるもの)
  • 常勤確認資料(健康保険資格確認書・標準報酬決定通知書等)
  • 確定申告書の写し(個人事業主の場合)

10年分の証明ができない場合、「書類が残っていないため申請できない」という状況になることがあります。まず手元にある書類を整理することが最初のステップです。


特定建設業の専技(要件がより厳格)

特定建設業(発注者から直接受注した1件の工事で、下請への発注合計が**5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)**となる場合に必要な許可)では、専技の要件がさらに厳しくなります。

根拠条文:建設業法第15条第2号

特定建設業の専技には、以下のいずれかが必要です。

  • 1級の国家資格者(一級建築士、一級土木施工管理技士など)
  • 国土交通大臣が定める試験に合格した者
  • 一般建設業の専技要件+元請として4,500万円以上の建設工事で2年以上の指導監督的な実務経験がある者(建設業法施行令第5条の3)

一般建設業から特定建設業への切り替えを検討している場合は、現在の専技が特定建設業の要件を満たしているかどうかを事前に確認しておきましょう。


業種別・主な国家資格対応表(一般建設業)

以下は、主要な業種と、専技として認められる代表的な国家資格の一覧です。 (これは代表例であり、すべての資格を網羅するものではありません)

業種代表的な対応資格
建築一式工事一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士
大工工事業二級建築士、木造建築士、建築大工技能士(1級)
屋根工事業一級建築士、二級建築士、屋根ふき技能士(1級)
土木一式工事一級土木施工管理技士、二級土木施工管理技士、技術士(建設部門)
管工事業管工事施工管理技士(1・2級)、給水装置工事主任技術者(交付後1年実務要)
電気工事業電気工事施工管理技士(1・2級)、第一種電気工事士、第二種電気工事士(交付後3年実務要)、電気主任技術者第1〜3種(交付後5年実務要)
塗装工事業一級塗装技能士、二級塗装技能士(実務経験要)、一級建築士など
防水工事業防水施工技能士1級・2級(実務経験要)
とび・土工・コンクリート工事業とび技能士1級・2級(実務経験要)、一級土木施工管理技士など
内装仕上工事業一級建築士、内装仕上げ施工技能士(1・2級)

⚠️ ワンポイントアドバイス

上記はあくまで代表例です。全業種・全資格の対応関係は**広島県建設業許可申請の手引き(令和7年2月版)P.103〜106「営業所技術者等(になることができる)資格・免許等コード番号一覧表」**で確認できます。 複数業種を同時に申請する場合は、業種ごとに専技の要件を満たしているかを個別に確認する必要があります。不明な場合は行政書士にご相談ください。


「常勤」要件とは?

専任技術者は、営業所に常勤していることが求められます。

「常勤」とは、原則としてその営業所に常時勤務し(テレワークにより職務に従事する場合を含む)、休日その他勤務を要しない日を除き、専任技術者として職務に従事できる状態をいいます。

なお、テレワークによる常勤が専任要件を満たすことは、令和3年12月に建設業許可事務ガイドラインで明確化されています。

専任と認められない主なケース(建設業許可事務ガイドライン)

① 住所またはテレワーク場所の所在地が、勤務を要する営業所から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者 ② **他の営業所(他の建設業者の営業所を含む)**において専任を要する者 ③ 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等、他の法令により特定の事務所等において専任を要する者(建設業の営業所と兼ねている場合を除く) ④ 他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等、他の営業等について専任に近い状態にあると認められる者

⚠️ ワンポイントアドバイス

**名義貸しは建設業法違反(第27条の37)です。**常勤実態がなく書類上だけ在籍させる行為は、発覚した場合に許可取消しや営業停止処分の対象になります。申請時には在籍・常勤の実態を正確に確認してください。

また、宅建士や建築士の資格者が「専任の宅建士」「建築士事務所の管理建築士」を兼ねている場合は、原則として専技になれません営業所が兼用の場合を除く)。建設・不動産・設計を兼業している事業者は特に注意が必要です。


経管と専技の兼任はできる?

一定の条件を満たせば、同一人物が経管と専技を兼ねることが認められています。

兼任が認められる主な条件

  • 同一営業所における兼任であること
  • その人物が経管要件・専技要件の両方を満たしていること

兼任が認められない主なケース

  • 異なる営業所での兼任(例:本店の経管が支店の専技を兼ねる)
  • 専任を要する工事現場(請負金額3,500万円以上等)の主任技術者・監理技術者との兼任

営業所専任技術者と現場技術者の兼務について

専技と現場の主任技術者・監理技術者の兼務については、以下の整理が重要です。

兼務できるケース(現行) その営業所で締結された工事であって、工事現場と営業所が近接し、営業所と常時連絡が取れる体制にある「非専任現場」(請負金額4,500万円未満等)であれば、専技が主任技術者等を兼務することが認められています。 (根拠:平成15年4月21日 国総建第18号)

兼務できないケース(現行) 請負金額4,500万円以上(建築一式は9,000万円以上)の専任を要する現場との兼務は、現行制度では認められていません。

⚠️ ワンポイントアドバイス

令和6年の建設業法改正により、一定のICT環境・施工体制等の要件を満たす場合には、営業所技術者等(旧・専任技術者)が「専任を要する工事現場」の主任技術者・監理技術者を兼務できる特例制度が導入されています。

もっとも、兼務の可否は、

  • 工事内容
  • 配置体制
  • 営業所との連絡体制
  • ICT活用状況

などによって個別判断されます。

実際に兼務可能かどうかは、申請先行政庁や専門家へ事前確認することをおすすめします。

小規模な個人事業主や、代表者が現場技術者を兼ねているケースでは、経管と専技の兼任が一般的です。


申請時に必要な疎明書類

専任技術者の要件を証明するために、申請書類として以下を提出します。

国家資格で証明する場合

  • 合格証明書・免許証の写し(資格の種類に応じた原本提示が必要な場合あり)
  • 常勤確認資料(健康保険資格確認書・標準報酬決定通知書等、行政庁の求めに応じて用意)

学歴+実務経験で証明する場合

  • 卒業証明書(指定学科卒業を確認)
  • 実務経験証明書(様式第九号):証明者(元の勤務先や発注者)の記名等が必要
  • 実務経験を証明する書類(工事請負契約書・注文書・請書など)
  • 常勤確認資料(健康保険資格確認書・標準報酬決定通知書等)

実務経験10年で証明する場合

  • 実務経験証明書(様式第九号):10年分の工事実績を記載
  • 工事実績を裏付ける書類(請負契約書・注文書・請書・請求書など)
  • 常勤確認資料(健康保険資格確認書・標準報酬決定通知書等)
  • 確定申告書の写し(個人事業主として自営していた期間がある場合)

⚠️ ワンポイントアドバイス

実務経験証明書(様式第九号)は、経験を積んだ会社(証明者)が記名・押印する書類です。すでに廃業した会社や、退職した会社と当時の代表者と連絡が取れない退職後に関係が悪化している場合は、証明書を取得できないケースがあります。

その場合は、注文書・請書の原本などで代替できる場合もあるため、早めに行政書士に相談されることをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q. 資格があっても専技になれない場合がありますか?

はい。資格が申請する業種に対応していない場合や、常勤実態がない場合は専技として認められません。また、他社や別営業所ですでに専任技術者として登録されている人を兼任させることもできません。

Q. 専技が退職したらどうなりますか?

専任技術者が退職等により不在となった場合は、後任者を確保したうえで変更届を提出する必要があります。後任者が見つからず許可要件を欠いた状態が続くと、許可取消し等の対象となる可能性があります。

Q. 複数の業種を申請する場合、専技も複数必要ですか?

申請する業種ごとに専技の要件を満たすことが必要ですが、1人の人物が複数業種の専技要件を満たしていれば、1人で複数業種を兼任することもできます(同一営業所に限ります)。

Q. 個人事業主本人が専技になることはできますか?

はい、できます。ただし、経管と専技を兼ねる場合の要件を同時に満たしている必要があります。また、工事現場での主任技術者との兼任についても制限があるため、工事規模に応じた確認が必要です。


まとめ|専技の要件は「書類が揃うか」が最大のポイント

専任技術者の要件は、資格・学歴・実務経験のいずれかで証明しますが、実際に申請が通るかどうかは「証明書類を揃えられるかどうか」にかかっています。

長年の経験を持っていても、書類がなければ行政はそれを認めることができません。逆に、きちんと書類を準備できれば、許可への道が開けます。

当事務所(森岡行政書士事務所)では、専任技術者の要件充足の事前確認から、必要書類の収集・作成サポートまで、福山・尾道・三原・府中・笠岡・岡山県南部エリアの建設業者様を対象に対応しております。「自分の場合、専技の要件を満たせるのか?」というご相談も無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。


関連記事はこちら /


参考:建設業法第7条・第15条・第27条の37、建設業法施行規則第13条の4 建設業許可事務ガイドライン(国土交通省、最新版) 監理技術者制度運用マニュアル(国土交通省、最新版) 国土交通省「建設業許可申請の手引き」(最新版) 広島県「建設業許可申請ガイド(令和7年2月版)」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次