建設業許可の「誠実性」要件とは?【建設業法第7条第3号を広島県・福山の行政書士が解説】

この記事でわかること

  • 「誠実性があること」という要件の正確な意味
  • 「不正な行為」と「不誠実な行為」の違い
  • 誠実性が問われる対象者(法人・個人別)
  • 申請時の証明方法と注意すべきケース
  • 欠格要件(第8条)との関係

目次

はじめに|誠実性要件とは

建設業許可の新規申請に必要な7つの要件のうち、経管や専技の設置要件と比べると見落とされがちなのが③誠実性があることという要件です。

条文上は「不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでない者であること」と定められており、一見すると当然の要件に見えます。しかしこの要件は、対象者の範囲が広い点や、許可後も継続して求められる点など、実務上おさえておくべきポイントがあります。


根拠条文

建設業法第7条第3号

請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと

この要件は、「不正・不誠実な行為をする者である」という積極的な事実を証明するのではなく、「そのおそれが明らかでないこと」を確認する消極的要件という点が特徴です。
つまり、問題がないことが前提であり、問題があると判断される事情がある場合に不許可となる構造になっています。


「不正な行為」と「不誠実な行為」の違い

誠実性要件でいう「不正または不誠実な行為」とは、建設工事の請負契約の締結または履行に関するものに限定されます。私生活上のトラブルや建設業と無関係な違法行為は、原則として誠実性要件の直接の対象にはなりません。

ただし、注意が必要です。**私生活上の違法行為であっても、拘禁刑(旧:懲役・禁錮)以上の刑に処せられた場合は、欠格要件(建設業法第8条)に該当する可能性があります。**誠実性要件はクリアしていても欠格要件で許可が受けられないケースがあるため、両方の要件をあわせて確認することが重要です。

不正な行為

詐欺・脅迫・横領など、法律に違反する行為を指します。広島県手引きでは「請負契約の締結または履行の際における詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為」と定義されています。

具体例:

  • 請負代金を受領したにもかかわらず工事を実施しない(詐欺)
  • 下請業者に対して不当な代金支払いの遅延・拒否
  • 虚偽の書類を使った契約締結

不誠実な行為

建設業許可事務ガイドラインでは、「不誠実な行為」について次のように定義しています。

工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為

つまり、法律違反には直接当たらなくても、請負契約の内容に違反する行為が広く対象となります。

具体例:

  • 約定した工事内容を正当な理由なく変更・省略する
  • 工期を請負契約に反して著しく遅延させる
  • 天災等による損害負担の取り決めを無視する

なお、同ガイドラインでは、建築士法・宅地建物取引業法等の規定により不正または不誠実な行為を行ったとして免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者は、原則としてこの基準を満たさないものとして取り扱われるとされています。建設業以外の業種での処分歴がある場合も注意が必要です。


誠実性が問われる「対象者」の範囲

誠実性要件のポイントのひとつが、誰が」対象になるかです。申請者本人だけでなく、役員や一定の権限を持つ使用人も対象に含まれます。

法人の場合

対象具体的な役職・立場
法人本体申請法人
役員等取締役・執行役・これらに準ずる者、および相談役・顧問など同等以上の支配力を有する者(非常勤を含め、実質的に法人の業務執行や経営に関与する者)
政令で定める使用人(令第3条の使用人)支配人・建設工事の請負契約締結権限を持つ支店長・営業所長など

個人事業主の場合

対象具体的な立場
申請者本人個人事業主
政令で定める使用人(令第3条の使用人)支配人・請負契約締結権限を委ねられた者

「令第3条の使用人」とは

「政令で定める使用人」とは、建設業法施行令第3条に規定されている使用人のことで、実務上は**「令3条の使用人」**と呼ばれます。

具体的には、次の者が該当します。

  • 支配人
  • 支店または営業所の代表者(支店長・営業所長など)

建設業許可事務ガイドラインでは、支配人や支店・営業所の代表者など、請負契約の締結・履行について一定の権限を有する者が「令3条の使用人」に該当するとされています。

実務上は支店長・営業所長などの役職者が該当することが多いですが、役職名だけで決まるものではなく、実際に営業所の代表者として契約締結等の権限を有しているかどうかが重要です。

経管や専技の要件でも同じく令3条の使用人が登場するため、許可申請を検討する際は、誰が令3条の使用人に該当するかを事前に整理しておくことが大切です。


申請時の証明方法

誠実性要件を「積極的に証明する書類」は、原則として存在しません。申請者自身が誓約書(申請書の一部)において「不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでない者である」ことを誓約する形で対応します。

広島県の建設業許可申請の場合も、申請書類の中の誓約書がその役割を担います。

⚠️ 実務上の注意点

誓約書は「事実の確認」ではなく「申告」です。虚偽の内容で誓約した場合は、建設業法第50条により罰則(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象になる可能性があります。


実際に問題になりやすいケース

誠実性要件は大多数の申請者にとってクリアできる要件ですが、以下のようなケースでは注意が必要です。

ケース①:他法令による免許・許可の取消処分を受けたことがある

建設業許可事務ガイドラインでは、建築士法・宅地建物取引業法等の規定により不正または不誠実な行為を行ったとして免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者は、原則としてこの基準を満たさないと明記されています。

「他業種のことだから関係ない」と考えがちですが、宅建業・建築士・廃棄物処理業などで不正・不誠実を理由とする取消処分を受けた場合は、最終処分日から5年間は原則として誠実性要件を満たさないものとして扱われます。なお、これは第8条の欠格要件のような絶対的な不許可事由ではなく、行政が総合的に判断する誠実性基準の問題である点に留意が必要です。業務停止処分(取消に至らない処分)については直ちにこの基準が適用されるわけではありませんが、処分の内容や経緯によっては総合的な判断に影響する可能性があります。

ケース②:役員に前歴がある

法人の役員の中に、過去に詐欺・横領・建設業法違反などで刑事罰を受けた者がいる場合、欠格要件(第8条)に加えて誠実性要件でも問題になることがあります。

ケース③:現在、民事訴訟・調停中

請負契約に関して係争中であるからといって、直ちに誠実性要件に影響するわけではありません。実務上、係争中であることのみを理由として直ちに不許可となるケースは多くありません。ただし、詐欺的な契約行為や悪質な契約違反が問題となっている場合などは、誠実性の判断資料として考慮される可能性があります。


許可後も継続して求められる

誠実性要件は、許可取得時に満たせばよいだけでなく、許可期間中(5年間)を通じて継続して求められます

許可後に役員等が建設工事の請負契約に関する不正行為を行った場合、建設業法第29条に基づく許可取消の対象になります。また、取消に至らない場合でも、**営業停止処分(建設業法第28条)**が下されることがあります。

許可の取消は事業に直接的なダメージを与えるだけでなく、不正行為等による許可取消処分を受けた場合は、一定期間(通常5年間)建設業許可を受けることができない(建設業法第8条第2号)ため、非常に重大な結果をもたらします。なお、取消処分を免れるために廃業届を提出した場合も同様に扱われます(同第3号)。


欠格要件(第8条)との関係

誠実性要件(第7条第3号)と、欠格要件(第8条)は混同されることがありますが、両者は根拠条文も判断基準も異なります

比較項目誠実性要件(第7条第3号)欠格要件(第8条)
根拠条文建設業法第7条第3号建設業法第8条
判断基準請負契約に関する不正・不誠実なおそれ具体的な列挙事由への該当
具体性行政が総合的に判断破産・拘禁刑以上の刑など明確な基準
申請の対象法人・役員・令3条使用人役員・令3条使用人(個別)

欠格要件が「白か黒か」をはっきりと定めた具体的な基準なのに対し、誠実性要件は総合的な判断が行われます。

実務上は、欠格要件に該当するようなケース(拘禁刑以上の刑・建設業法違反など)は、誠実性要件にも抵触することが多く、両要件を一体で確認することが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q. 役員の1人が過去に交通違反で略式起訴を受けたことがありますが、問題になりますか?

交通違反そのものは建設業の請負契約とは直接関係がないため、通常は誠実性要件の問題にはなりません。ただし、拘禁刑以上の刑(執行猶予含む)については欠格要件の確認が必要です。また、危険運転致死傷や酒気帯び運転による重大事故など、悪質性の高い交通犯罪については別途検討が必要なケースもあります。詳細はケースバイケースですので、専門家への事前相談をお勧めします。

Q. 申請時に具体的にどんな書類を提出しますか?

誠実性については主に**誓約書(申請書様式の一部)**で対応します。別途、独立した証明書を取得する必要は基本的にありません。

Q. 個人事業主で、過去に取引先と揉めたことがあります。誠実性に影響しますか?

一度のトラブルが直ちに問題になるわけではありません。「おそれが明らかな者でないこと」という文言のとおり、行政は様々な事情を総合的に考慮して判断します。心配な場合は事前に許可申請の専門家に相談することをおすすめします。

Q. 誠実性に問題があると判断された場合、どうなりますか?

申請が不許可になります。また、すでに許可を受けている場合は、**営業停止(建設業法第28条)や許可取消(同第29条)**の処分を受ける可能性があります。


誠実性要件で実際に不許可になるケースは多い?

結論からいえば、誠実性要件単独で不許可となるケースは、欠格要件(第8条)と比べると実務上それほど多くありません。

欠格要件は「破産」「拘禁刑以上の刑」など条文に列挙された具体的な事由への該当が判断基準であるのに対し、誠実性要件は「不正または不誠実な行為をするおそれが明らかかどうか」という行政の総合的な裁量判断です。そのため、実際に問題となりやすいのは次のようなケースに限られる傾向があります。

  • 他業種(建築士・宅建業等)で不正・不誠実を理由とする免許取消処分歴がある
  • 役員に詐欺・横領・建設業法違反等の処分歴がある
  • 過去に建設業許可を取り消された経緯がある

一方で、「過去に取引先とトラブルがあった」「民事訴訟を経験したことがある」といった事情だけで直ちに問題になるケースは少ないとされています。

ただし、行政の判断には裁量が伴うため、「自分のケースでは大丈夫か」と不安がある場合は、申請前に専門家へ相談して整理しておくことが安心です。処分歴や前歴がある場合でも、内容・経緯・経過年数によっては許可取得の見通しが立つこともあります。


建設業許可の誠実性要件(建設業法第7条第3号)のポイントをまとめます。

項目内容
根拠条文建設業法第7条第3号
要件の性質消極的要件(おそれが明らかでないこと)
対象者法人・役員・令3条使用人(法人)、本人・令3条使用人(個人)
申請時の証明誓約書(申請書の一部)
継続義務許可期間中(5年間)継続して求められる
違反した場合営業停止・許可取消(一定期間、通常5年間は再取得不可)

他の6つの要件と同様に、誠実性要件は取得後も継続して維持が必要です。役員の変更や組織体制の変化があった際には、新たな役員等が誠実性要件を満たしているかどうかを改めて確認することが大切です。


当事務所(森岡行政書士事務所)では、福山・尾道・三原・府中・笠岡・岡山県南部エリアの建設業者様の許可申請をサポートしています。「誠実性要件について不安がある」「過去の処分歴がある場合でも許可が取れるか確認したい」といった事前相談も無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。


参考:建設業法第7条第3号・第8条・第28条・第29条、建設業法施行令第3条
広島県「建設業許可申請ガイド(令和7年2月版)」

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