建設業許可の欠格要件とは?前科・執行猶予・破産の影響を福山の行政書士が解説

建設業許可を取るには、経営業務の管理体制・営業所技術者(専任技術者)・誠実性・財産的基礎・社会保険加入といった要件を満たす必要があります。これらの要件とは別に、「欠格要件に該当しないこと」も重要な審査項目です。
経管や専任技術者、財産的基礎などが「満たすべき要件」であるのに対して、欠格要件は「該当してはいけない不許可事由」という、ちょうど裏返しの性質を持ちます。ほかの要件をすべてクリアしていても、1つでも欠格要件に当てはまる人がいれば、それだけで不許可になってしまいます。
「前科があると許可は取れない?」「執行猶予中はどうなる?」「破産したら無理?」といったご相談は少なくありません。この記事では、福山市で建設業許可を専門に扱う行政書士が、建設業法第8条の条文に沿って欠格要件の中身と実務上の注意点をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 欠格要件とは何か(許可要件とは別に審査される不許可事由)
- 誰がチェックの対象になるのか
- 14項目の欠格要件の中身
- 前科・執行猶予・罰金・破産は許可にどう影響するのか(FAQ)
- 多くの解説が間違えている、改正で変わったポイント
建設業許可の「欠格要件」とは
欠格要件とは、これに当てはまると建設業許可を受けられない、または許可後に該当すると取消しの対象になり得る事由のことです。建設業者としてふさわしくないと考えられる一定の事情を、あらかじめ法律で列挙しています。
ポイントは次の3つです。
- 1つでも該当すればアウト。経管・技術者・財産要件などをすべて満たしていても、欠格要件に1つ触れれば不許可になります。
- チェックされるのは会社(申請者)だけではありません。役員や一部の使用人など、複数の関係者が対象です。
- 新規許可だけでなく、更新や許可後も問題になります。特に許可後に法第8条第1号または第7号〜第14号に該当した場合は、許可取消し(必要的取消し)の対象になります。
根拠条文|建設業法第8条
欠格要件は、建設業法第8条に定められています。第8条は大きく分けて、
①許可申請書や添付書類に重要な事項の虚偽記載・記載漏れがある場合と、
②申請者・役員等・一定の使用人が第1号〜第14号の欠格要件に該当する場合、
のいずれかに当たると「許可をしてはならない」と規定しています。
建設業法第8条(抜粋)
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあつては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。(以下、第一号〜第十四号)
条文の正確な全文は、e-Gov法令検索の建設業法(昭和二十四年法律第百号)でご確認いただけます(出典:e-Gov法令検索)。
欠格要件は「誰が」チェックされるのか
意外と見落とされがちなのが、チェックの対象者の広さです。会社本体(申請者)だけでなく、次の人たちが対象になります。
| 区分 | 対象になる人の例 |
|---|---|
| 法人の場合 | 法人本体、取締役・執行役・業務を執行する社員などの役員等。相談役・顧問・議決権5%以上の株主等についても、取締役等と同等以上の支配力を有すると認められる場合は確認対象※ |
| 個人事業主の場合 | 事業主本人、支配人 |
| 共通 | 令3条使用人(支店長・営業所長など、契約締結の権限を持つ使用人)、未成年の場合の法定代理人 |
※「役員等」の範囲や、相談役・顧問・株主等を確認対象とするかどうかは、建設業許可事務ガイドラインの考え方に基づき、取締役等と同等以上の支配力を有するかを個別に判断します。
つまり、「社長個人は問題ないが、ある取締役が過去に該当してしまう」というケースでも会社全体が不許可になります。申請前に対象者を正確に洗い出すことが大切です。
14項目の欠格要件をわかりやすく解説
第8条の欠格要件は第1号から第14号までに分かれています。条文は表現が難しいので、内容を整理すると次のとおりです。
| 号 | 内容(要約) |
|---|---|
| 1 | 破産手続開始の決定を受け、まだ復権を得ていない者(破産者で復権を得ない者) |
| 2 | 不正手段や情状の特に重い事由などで許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者 |
| 3 | 取消処分の通知後に、処分逃れのための廃業届を出した者で、届出の日から5年を経過しない者 |
| 4 | 上記3の廃業届に関わり、通知前60日以内に役員等・使用人だった者で、5年を経過しない者 |
| 5 | 営業の停止を命ぜられ、その停止期間が経過していない者 |
| 6 | 営業を禁止され、その禁止期間が経過していない者 |
| 7 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(罪名は問わない) |
| 8 | 建設業法・建築基準法・労働基準法・職業安定法・労働者派遣法など一定の法令の違反、または暴行・傷害・脅迫・背任などの罪で罰金刑に処せられ、5年を経過しない者 |
| 9 | 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(暴力団員等) |
| 10 | 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの |
| 11 | 営業に関し成年者と同一の行為能力を持たない未成年者で、その法定代理人が欠格要件に該当する場合 |
| 12 | 法人で、役員等または政令で定める使用人の中に欠格要件に該当する者がいる場合 |
| 13 | 個人で、政令で定める使用人の中に欠格要件に該当する者がいる場合 |
| 14 | 暴力団員等がその事業活動を支配している者 |
ポイント:罰金刑を受けた場合でも、すべての罪が欠格要件になるわけではありません。第8号で対象になるのは、建設業法施行令で定められた一定の法令違反や、刑法上の傷害・暴行・脅迫・背任等の罪、暴力団対策法違反などに限られます。
※第10号の「心身の故障により…」の具体的な基準は、建設業法施行規則で「精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定められています。
【FAQ】前科・執行猶予・罰金・破産は許可に影響する?
Q. 前科があると建設業許可は取れませんか?
A. 前科があること自体で、一律に不許可になるわけではありません。問題となるのは主に2つの場合です。
① 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行が終わった日などから5年を経過していない場合(罪名を問わず/第7号)。
② 建設業法・建築基準法・労働基準法などの一定の法令違反や、傷害・暴行・脅迫・背任などの罪で罰金刑を受け、5年を経過していない場合(第8号)。
これらの期間を経過していれば、過去に前科があっても許可を受けられます。
Q. 執行猶予中でも建設業許可は取れますか?
A. 執行猶予の期間「中」は、拘禁刑以上の刑に処せられた状態にあるため、欠格要件に該当します。そのため、執行猶予期間中は許可を受けられません。
ただし、執行猶予が取り消されることなく猶予期間を満了すると、刑法第27条により刑の言渡しそのものが効力を失うため、その時点で欠格要件から外れます。満了後にさらに5年を待つ必要はありません。(この点は誤解の多いところです。)
なお、具体的な刑の内容や判決の事情によって確認すべき点があるため、不安がある場合は申請前に個別に確認することをおすすめします。
Q. 交通違反の罰金でも欠格要件になりますか?
A. 交通反則金(いわゆる青切符)は行政上の措置で刑罰ではないため、欠格要件にはなりません。また、道路交通法違反で正式な罰金刑を受けた場合でも、罰金刑が欠格要件となる法令(第8号)に道路交通法は含まれていないため、原則として該当しません。
ただし、危険運転致死傷罪などで拘禁刑以上の刑を受けた場合は、罪名を問わず第7号により欠格要件に該当します。
Q. 破産すると建設業許可は取れませんか?
A. 破産手続開始の決定を受けても、復権を得れば欠格要件には該当しません(過去に破産した経歴があるだけなら問題ありません)。現在破産手続中で、まだ復権を得ていない場合のみ欠格要件に該当します。なお、免責許可の決定が確定すれば復権します。
特に間違えやすい3つのポイント
欠格要件は法改正が重なっており、古い情報のまま解説しているサイトが少なくありません。実務でつまずきやすい点を3つ挙げます。
① 成年被後見人だから「自動的に欠格」ではありません
かつては第1号に「成年被後見人若しくは被保佐人」が含まれていましたが、令和元年(2019年)の法改正で削除されました。現在は、後見等を受けていること自体で一律に不許可とするのではなく、第10号「心身の故障により…」の基準に従って個別に判断される仕組みに改められています。今でも「成年被後見人は不許可」と書いてある解説を見かけますが、最新の条文とは異なります。
② 「禁錮以上」ではなく「拘禁刑以上」です
第7号は、令和7年(2025年)6月1日施行の刑法改正により、「懲役・禁錮」が「拘禁刑」へ一本化されたことに伴い、「拘禁刑以上の刑」という表現に変わっています。罪名を問わず、拘禁刑以上の刑を受けて5年を経過していなければ該当します。
③ 更新のときは対象になる号が一部にしぼられます
新規許可ではすべての号がチェックされますが、更新の場合は第1号と第7号〜第14号のみが対象です(第2号〜第6号は更新時の欠格事由から除かれます)。許可の維持・更新を考えるうえで知っておきたいポイントです。
虚偽記載・記載漏れも「不許可」になります
第8条のもう一つの柱が、申請書類の虚偽記載・記載漏れです。重要な事項について事実と異なる記載があったり、必要な記載が欠けていたりすると、故意でなくても、内容によっては不許可の理由になり得ます。許可取得後に発覚した場合は、取消しにつながることもあります。
注意:欠格要件は「該当する事実を隠せばよい」というものではありません。役員の経歴や過去の処分歴などは確認される前提で、正確に申告することが結果的に最も安全です。
欠格要件に「うっかり該当」しないための申請前チェック
不許可を避けるために、申請前に次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 対象者を正確に洗い出す:役員・令3条使用人・(法人なら)一定の株主まで含めてリスト化する
- 過去の処分・刑罰歴を確認する:許可取消し、営業停止、罰金・拘禁刑などの有無と、その後の経過年数
- 5年の起算点を確認する:取消しの日、刑の執行が終わった日などから5年を経過しているか
- 書類の記載を二重チェックする:経歴・役員構成・本店所在地などに食い違いがないか
特に「過去に罰金刑や拘禁刑を受けたことがある」「役員の経歴に不安がある」「過去に許可の取消し歴がある」といった場合は、自己判断で申請を進めると、思わぬ不許可につながることがあります。実際に欠格要件へ該当するかは、刑の種類や経過年数など事案によって判断が分かれることもあります。少しでも不安がある場合は、申請前に行政書士へご相談ください。
福山で建設業許可をお考えの方へ
森岡行政書士事務所では、福山市・尾道市・三原市・府中市・笠岡市および岡山県南部を中心に、建設業許可の新規申請・更新をサポートしています。欠格要件の事前確認から書類作成・申請代行まで、誠実に対応いたします。
「過去の前科や罰金が欠格要件に当たらないか不安」「役員のうち誰までチェックされるのか分からない」といったご相談も歓迎です。まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ
- 欠格要件は、許可要件とは別に審査される「該当してはいけない不許可事由」(建設業法第8条)
- 1つでも該当すれば、ほかの要件を満たしていても不許可になる
- チェックされるのは会社だけでなく、役員等・令3条使用人など複数の関係者
- 前科があっても、5年などの期間を経過していれば許可は受けられる
- 執行猶予は「期間中」のみ該当。満了すれば刑法27条で言渡しが失効し、追加の5年待ちは不要
- 交通反則金・道交法の罰金刑は原則として欠格要件に当たらない
- 破産は復権を得れば該当しない。手続中で復権前のみ該当
- 第1号は「破産者で復権を得ない者」。成年被後見人等は2019年改正で削除
- 第7号は「拘禁刑以上」(2025年改正で表記変更)
- 更新時は第1号・第7号〜第14号のみが対象
- 書類の虚偽記載・記載漏れも、内容によっては不許可の理由になり得る
正確な条文は、e-Gov法令検索(建設業法)でご確認ください。
